楽天経済圏を利用しているけど
最近改悪が続いて心配
なぜ、こうも改悪が続くの?
そんな疑問をお持ちの方も多いんじゃないかと思います。
私も日々Rakutenにお世話になっている立場なので楽天には頑張ってもらいたいです。
そんな方々に対して楽天の事情について、これまでの環境や決算などから 考えられることをまとめました。
この記事を読めば、楽天の現状と今後良くなる希望がありそうかどうかが判断できるようになります。
最後まで目を通していただければ幸いです。
楽天グループの事業内容
まず、楽天グループ(銘柄コード4755)が何をしている会社か、ということですが インターネットショッピングやクレジットカード、銀行、モバイル、旅行、書籍、エンタメなどさまざまなサービスを展開しています。
大きく分けるとインターネットサービス、フィンテック、モバイルに分けられます。
売上の割合としては
インターネットサービス | 53.8% |
フィンテック | 33.9% |
モバイル | 12.3% |
となっています。
フィンテックとは金融(ファイナンス)とテクノロジーを合わせたセグメントで、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、保険などが含まれます。
楽天モバイル 予想外の展開で思惑通りには進まず?
楽天のモバイル事業において、MNO(Mobile Network Operator)としては2020年3月に料金プラン発表、4月から4Gサービス開始となりました。
他の大手3大キャリアと比較して破格の低価格でデータ使い放題を掲げ、第4のキャリアとして顧客の獲得を目指しました。
しかし、その後おそらく楽天が想定していなかったことが起きていきます。
菅内閣が発足
2020年9月16日に菅義偉(すがよしひで)内閣が発足しました。
菅さんといえば、総務省時代からずっと携帯料金の引き下げを主張されていました。
確かに日本のケータイ代は諸外国と比べても高すぎました。
大手3大キャリアの利益率が20%もあって儲けすぎというのもごもっともではあります。
菅さんが総理大臣になったことで、携帯料金引き下げの圧力が高まりました。
NTTがドコモを完全子会社化
菅政権の携帯料金引き下げ要求とタイミングを同じくして、2020年9月29日、NTTがNTTドコモとの合併を発表し話題となりました。
3大キャリアのうちNTTドコモはKDDI、ソフトバンクと比べて営業利益率で負けており、NTTとNTTドコモの合併が、結果として価格競争における競争力を高めることにつながります。
2020年12月3日に新料金プランahamoを発表しました。
2021年3月からサービスを提供するとの発表です。
楽天モバイルは2020年4月からサービスを開始し、先着300万人は1年間無料としていました。
NTTがいよいよ本格的に値下げをおこなってきたことで、これまでとは明らかに状況が変わって値下げ競争が始まることになりました。
2021年1月13日、auが「povo」を2021年3月から提供すると発表。
2021年2月18日、ソフトバンクが「LINEMO」を2021年3月から提供すると発表。
NTTに負けていられない大手他社も対抗する新料金プランを発表し、楽天の競争力が相対的に落ちてしまいました。
やっと2021年4月から月額料金が発生するであろうユーザーが大手の新料金プランに乗り換えてしまうかもしれない状況になったわけです。
これらの変化は楽天にとっては誤算だったのではないでしょうか?
当初、楽天がどの程度のユーザー数の獲得を見込んでいたかはわかりませんが、仮に3大キャリアがそのままの料金だった場合と比べると獲得ユーザー数は減ったのではないでしょうか。
最新の決算から見えること
楽天グループの前回の決算発表(2021年11月)から状況を確認してみましょう。
フィンテック事業で稼いでいる
冒頭に各セグメントの売上収益の比率を紹介しましたが、利益の部分でも見てみます。
楽天の事業別利益でみると、フィンテック事業が利益の柱であることがわかります。
四半期の利益が、フィンテックのセグメントでだいたい210億円くらいあります。
フィンテックの中でも
楽天カード | 約98億円 |
楽天銀行 | 約73億円 |
楽天証券 | 約40億円 |
とこの3本柱で利益を得ている会社と言えます。
フィンテックの中では楽天ペイメントはイマイチ機能していないようにも見えます。
モバイル事業は赤字拡大中
先程の事業別利益ですが、モバイルの部分をグラフでみてみます。
どんどん赤字が拡大しているのが一目でわかります。
楽天カードなどのフィンテック事業で得た利益をモバイル事業へ先行投資として注ぎ込んでいる構造です。
楽天モバイルの現況
楽天モバイルの現在の状況ですが、MNOのユーザー数は徐々に増えて400万人を超えてきているようです。
大手3大キャリアの契約数は
NTTドコモ | 約8,300万人 |
au | 約6,100万人 |
ソフトバンク | 約4,700万人 |
となっていて、各社ともまだ契約者数を伸ばしています。
楽天はまだまだ大きく差をつけられている様子です。
楽天モバイルとしては基地局の設置を急いでいる状況ですが、一部、半導体不足による影響も受けています。
基地局の設置に伴って、KDDIの回線を借りているデータローミングサービスも切り替えが進めば、KDDIに払っている回線利用料の負担も減る見込みです。
EC事業やフィンテックの顧客は順調に伸びている
E-Commerce事業やフィンテックの顧客は順調に増えています。
2つ以上の楽天サービスを利用しているクロスユースの割合も右肩上がりで推移している状況です。
これらのように顧客基盤は順調に拡大しており、楽天市場や楽天カード、楽天証券を利用しているユーザーは十分増えてきたことになります。
楽天ペイメント、楽天モバイルにこそ伸びしろがある
楽天としては資料からもわかるように、楽天モバイルと楽天ペイメントが弱いです。
逆に大きく伸ばせるチャンスはあるかもしれません。
この部分の顧客を増やすことに注力するという戦略が考えられます。
楽天モバイルについては1年間の利用料無料が終了した後、新規のユーザーに対して3ヶ月間の利用料無料のキャンペーンをおこなったり(2022年2月8日で終了)、乗り換えで大量のポイントがもらえるキャンペーンを続けたりして、さらなるユーザーの獲得を目指しています(他社も同様ですが)。
先日の投資信託のカード積立のポイント還元率の改悪では、楽天キャッシュを導入する旨の発表もあり、これは楽天ペイを使ってくださいというメッセージと捉えることもできます。
今後、楽天ペイメント関連の還元が色々と強化される可能性もあり、すでに楽天経済圏のユーザーは賢く乗っかっていくのが経済的ではないでしょうか?
まとめ
ということで、楽天の改悪が続く背景について検討しました。
まとめますと以下のようになります。
- モバイル事業の成功を目論んでいたが、菅内閣の発足によって大手3大キャリアが予定外に値下げ競争を始め、狙った通りに顧客を取れなかったか
- 楽天モバイルへの先行投資がまだ続いており、利益が出るまでもう少しかかりそう
- 他者のECサービスにそこまで顧客を取られていないので多少のポイント低下でも離れる顧客はそこまで多くないと踏んでいるかもしれない
といったところでしょうか。
とにかくモバイル事業の赤字が拡大しているのが要因と思われます。
これまで、楽天のポイントは他社(特に楽天市場に対するヤフーショッピング)との競争の中でユーザー・顧客を取り込むために利益度外視でプロモーションコストとしてかけてきた部分が大きいはずです。
顧客基盤がある程度拡大してきており、楽天経済圏で実績を上げてきたユーザーは他社へ移りづらくなるというのも事実なので、このタイミングでじわじわとポイントの還元率を下げてくるのは、企業の戦略としては至極真っ当とも言えます。
ECやフィンテックは伸びてはいそうなので、楽天モバイルの基地局設置が進み、通信品質がある程度保てれば利益化が進む計算ができるようになっていくでしょう。
そこに期待して待つしかありません。
楽天の次の決算発表は2022年2月14日に予定されています。
楽天グループのホームページからでもいいですし、マネックス証券の銘柄スカウターでも良いので、前回と比較して業績がどうなったかをチェックしてみてください。
モバイル事業で大手3大キャリアから4大キャリアになれるかどうか、今後の動向を見守っていきたいと思います。