債券ETFって何?
債券ETFに投資するといいことあるの?
おすすめの債券ETFがあれば教えて!
そんなあなたの疑問を解決する記事を用意しました。
本記事では以下のことがわかります。
- 債券とは
- 債券の特徴
- 債券ETFの特徴
- 目的別のオススメ債券ETF
本記事を読めば、有名どころの債券ETFをしっかりと理解できます。
そして、それらの債券ETFにどんな強み、弱みがあるか、ご自分のポートフォリオに債券を組み入れる必要があるのか、を考えることができるようになります。
米国が利上げを進めている2022年〜2023年は債券ETFを安く買って利回りを上げることができる買い時かもしれません。
説明はいいから、早くおすすめの債券ETFが知りたい!という方は目次からジャンプしてください。
債券とは
債券とは国や会社が発行する借金の有価証券のことです。
国債・社債とは
みなさんは、「国債」とか「社債」といった言葉を聞いたことがあると思います。
これらは債券を発行している母体が違うために呼び方が区別されています。
発行母体と債券の呼び方の例は以下の通りです。
(発行母体) (債券の呼び方)
- 国 国債
- 政府 政府保証債
- 企業 社債
- 地方自治体 地方債
- 銀行 金融債
債券の特徴
債券の特徴、それは「期限と利率が決まっている」ということです。
例えば
満期2年で利率2%/年(発行時)の債券の場合、
100万円分の債券を買う(100万円を発行体に貸す)と毎年2万円の利息がもらえて、
2年経てば貸した100万円も帰ってくる
ということです。
なので、債券は「満期まで持っていれば利息分だけ必ず得をする(為替を無視した場合)」、というものになります。
満期日(償還日)前でも売ることはできますが、市場価格が下がっていれば損をする可能性もあります。
債券価格の変動に関してですが、金利が上がると、一般に債券価格は下がります。
短期債券は値動きが小さいのが一般的です。
普通は短期間に急に金利が変化することは少ないからです。
一方で長期債券は、将来的な金利の上げ下げの予測なども織り込んで株式のように価格が大きく変動しやすい特徴があります。
一例として、短期債券ETF(BSV)、中期債券ETF(BIV)、長期債券ETF(BLV)の値動きを比べたグラフ(2019/1/1-2020/12/31)をお見せします(株式の値動きとの比較のためS&P500に連動するSPYも載せています)。
BSV、BIV、BLVは、いずれもバンガード社が運用する債券ETFで、違いは債券の期間です。
この中では、グラフのピンク色の長期債券のBLVが最も値動きが大きく、水色の短期債券のBSVが最も値動きが小さいのが確認できると思います。
2022年現在、米国ではインフレに対してFRBによる利上げが行われていますが、この利上げは政策金利であり、短期金利の利上げになります。
短期債券の価格は利上げの影響を受けて下がりやすくなります。
一方で長期債券は、現在の利上げが10年後、20年後にどうなっていると思うかを見込んで判断されるので、あまり読めません。
また、一般に長期的には債券よりも株式の方がリターンは良くなるという過去のデータがあります。
こちらは1802年に各金融商品を1ドル分買ったら、200年でどれくらい増えたかを表した、ジェレミー・シーゲルさんという方が示した有名なグラフですが、株式がもっともパフォーマンスが良く1ドルが200年で93万倍(実質利回り6.7%)、債券は中間で278倍〜1500倍(利回り2.7〜3.5%)です。
この結果だけ見れば、暴落が来ても株価が戻るまで待てる時間的余裕があるならば株式の方がいいと言えます。
後半で株式と債券の値動きの違いなどについても触れますが、暴落時にポートフォリオのダメージを軽減したいであるとか、分配金を得たいとかであれば、 多少リターンが落ちても債券を入れておくことで、ポートフォリオの値動きがマイルドになるかもしれません。
- 満期日と利率が決まっている
- 金利が上がると一般に債券価格は下がる
- 短期債券は値動きが小さい
- 長期債券は値動きが大きい
- 長期リターンは株式に劣る
利回りの計算
利回りは投資した額に対して、実際のリターンがどれくらいかの割合です。
例えば、
「利率3%の債権を100万円購入し、3年後に103万円で売却した場合」で考えます。
簡易化するために、税金は無視しますが、
利子が
3年間、100 万円の3%(=3 万円)×3年で9 万円
売却益が
103 万円−100 万円=3 万円
利益の合計は
9 万円+3 万円=12 万円です。
「100 万円投資して3年間で12 万円の利益」なので、
利回りは
(12 万円÷3 年=4 万円/年)÷100 万円=0.04/年(=4%/年)
というように、利回り4%(/年)と求められます。
設定された利率だけではなく、債券価格とその売買タイミングによっても変わるというわけです。
債券の格付け:信用リスク
債券の発行体に対して信用格付けというものがあります。
格付け機関によって多少呼び方は違いますが、一般にAAA(トリプルA)、AA(ダブルA)、A(シングルA)、BBB(トリプルB)、・・・とDまで10段階あります。
AAAからBBBまでが「投資適格」とされます。
債券ETFの特徴
ETFとは上場投資信託の略で、一つの銘柄だけでなくいろいろな銘柄をいろいろな割合で組合せた詰合せパックのようなものです。
ETFは投資信託と違って、市場に上場しており、個別株と同じように市場で売買することができるものになります。
そこで、債券ETFは債券に関してETFの特徴を持ったものになります。
まとめると以下のようになります。
- 種類や期間が異なるいろいろな債券を組合せたパックとして分散投資ができる
- 市場でいつでも売買できる
- 株式のように値動きがある
米国債券ETFのランキング
純資産総額の大きい順に米国債券ETFのランキング、TOP20を一覧で紹介します。
1位と2位のAGG、BNDが10兆円を超えていてダントツです。
主にバンガード社とブラックロック社の債券ETFが並んでいる形です。
各種の短期債券、中期債権、長期債券のラインナップがそれぞれランクインしていますが、その中で経費率が高いにもかかわらずランクインしているETFがあるのがわかりますでしょうか?
6位のLQD、7位のTIP、12位のTLT、17位のHYGなどが経費率高いにもかかわらず、資金が集まっていてみんなが買っているETFであると考えられます。
これらのETFも含めて目的別のおすすめ債券ETFを紹介していきます。
おすすめの債券ETF
ここからは、いよいよオススメの有名どころETFをご紹介します。
値上がり益を狙うのか、安定性を求めるのか、分配金目的かなど目的によって適した債券ETFを検討する必要があります。
以下に、その例を見ていきます。
安定性重視の債券ETF
安定性で考えるのであればAGGとBNDのどちらかならまず間違いありません。
両者の概要は以下の表のとおりですが、それぞれの詳細は順に解説します。
AGG
AGG(iシェアーズ・コア 米国総合債券市場ETF)はブラックロック社が2003年から運用する債券ETFで、 米国債券ETFとしてはトップの純資産総額を誇ります。
米国の投資適格債券全体にまとめて投資ができるETFです。
AGGは10,000銘柄以上の債券に分散して投資ができますが、組入れられている銘柄の7割以上が信用格付けAAAであり、99%以上がBBB以上の投資適格債券です。
発行体の業種としては財務省が40.76%、モーゲージ・パススルー証券(政府保証付不動産担保証券)が27.22%がとなっています。
【モーゲージ・パススルー証券(MBS)】
一般に複数の住宅ローン担保債券を期間や利率などが似たもので取りまとめてプール、証券化したもの。
住宅ローンの元利金支払いが、そのまま証券を購入した投資家に支払われる仕組みからパススルーと言われる。
- 特徴① 利回りが高い
- 特徴② 信用力が高い
- 特徴③ 流動性が高い
- 特徴④ 期限前償還のリスクがある
組入銘柄の残存年数は1〜5年の中期の債券が約36.5%、5〜10年の長期債券が約35%、10年以上の超長期の債券は 約27%です。
BND
BND(バンガード米国トータル債券市場ETF)はバンガード社が運用する債券ETFで、 AGGと米国債券ETFで1、2を争う大きなETFです。
AGGと同じように、米国の投資適格債券に非常に広く分散投資ができます。
信用格付けは、信用力の高い米国政府が66.6%で、BB以下は0.10%のみとなっています。
発行体の業種としては財務省(国債)が45.50%、政府保証のモーゲージ債20.20%、・・・となっています。
組入銘柄の残存年数は1〜5年の中期の債券が約40%、5〜10年の長期債券が約34%、10年以上の超長期の債券は 26%です。
AGG、BNDの値動き
AGGとBNDの値動きをS&P500の株価チャートと比べてみます。
以下はYahoo! financeからS&P500(青の線)とAGG(水色)、BND(紫)の価格の変化を表したチャートですが
AGGとBNDは株式であるS&P500と比べるとほとんど値動きしないのがわかります。
騰落率が小さく、値動きが安定していると言い換えることもできます。
AGGかBNDか
正直、AGGとBNDはほぼ同じです。
信用格付け、発行体、構成業種をそれぞれバタフライチャートで比べてみてもほとんど同じであることが見て取れます。
以下はYahoo! financeから直近5年のAGG(青色の線)とBND(水色の線)の価格の変化を比べたチャートです。
先ほどはS&P500と比べたためAGGとBNDの差が分かりづらいように見えましたが、AGGとBNDの2つだけで比べても、両者の線はほぼ重なっていて、パフォーマンスに大差ないのがわかります。
2022年に入ってAGGもBNDも価格がぐっと下がってきていますが、これはインフレとそれに対する利上げの影響と考えられます。
AGG/BNDの弱点としてはインフレ時に価値が下がることにあります。
経費率については、以前はAGGが0.04%、BNDが0.035%でしたが、2022年2月にAGGが経費率が0.03%に引き下げたところバンガード社がすぐに対抗して同年4月にはBNDの経費率も0.03%に引き下げられました。
AGGかBNDかは、正直どちらでもよく好みで選べば良いと思います。
- 信用リスクが低い
- 株式と比べて値動きが安定している
- 2%〜3%の分配金利回りが期待できる
- インフレに弱い(価格が下がる)
インフレで上昇するETF
AGGやBNDはインフレに弱いと言いましたが、インフレに連動するTIPというETFがあります。
TIPの基本情報
TIPは米国の物価連動国債に連動するブラックロック社の債券ETFで、物価が上がればTIPの価格も上がり、物価が下がればTIPも下がります。
TIPの基本情報は以下のとおりです。
TIPのリターン
TIPの公式サイトで過去5年間の分配金込みのトータル・リターンを確認してみますと、年次では-1.43%の年もあれば2020年は10.91%と2桁のリターンの年もあります。
長期の年率リターンとしては10年で2.91%、2003年からの設定来(約18年)で4.41%となっています。
分配金利回りとしては下の表のように、各年でだいぶバラツキがあります。
完全おまかせロボアドバイザーの「WealthNavi」において、リスク許容度1および2の場合は債券としてAGGの他にTIPも組み込まれるようになっています。
こうすることで、インフレ局面に弱いAGGをカバーすることができ、よりリスクの低いポートフォリオになり得ます。
ロボアドバイザーのWealthNaviについては、過去の記事もありますので参考にしてみてください。
値上がり益狙いの債券ETF
株式のように値動きのうねりをとって値上がり益を狙える債券ETFにTLTがあります。
TLTの基本情報
TLTの基本情報は以下のとおりです。
TLTの信用リスク
米国超長期国債への投資であり、信用力としてはは極めて高いです。
米国がなくならない限り償還リスクはありません。
TLTは値動きが激しい
TLTは20年超の米国国債と同じ値動きをするETFです。
超長期の債券なので、前述したように短期債券と比べると利回りの変動が起きやすく、市場の値動きとの相関性もある程度出てきて値動きが大きくなりがちです。
「実効デュレーション」は執筆時点で18.02年(公式サイトより)となっているので、長期金利が1%上昇するとTLTの価格は18%程度下落する可能性があることを表しています。
【デュレーション】
金利の変動によって株価がどの程度変動するかを表す目安。
ブラックロックのTLTのサイトから実際の結果をみてみますと、年毎のリターンにはかなりバラツキがあることがわかります。
コロナショック後の金融緩和によってリターンがよくなっていますが、2021年はバイデン政権になり利上げの懸念も高まったためか、マイナスのリターンになっています。
TLTは株式暴落時のリスクヘッジになる!?
TLTの値動きが大きいことは前述しましたが、それだけなら株式でリターンを狙った方が良いのでは?とも思いますよね。
TLTは株式と違った動き方をする可能性があります。
下のチャートは青がS&P500を表していて、水色がTLTですが、2008年に起こったリーマンショックや2020年のコロナショックの際にS&P500が下落する一方でTLTが逆に値上がりしているのがわかります。
株式の他に、TLTをポートフォリオに組み込んでおくと、リーマンショックやコロナショックのような暴落時のリスクヘッジになる可能性があります。
単に、持ったまま暴落の損失を軽減するという効果もあるでしょうが、もっと積極的に運用する方法もあります。
例えば、株式暴落時、暴騰したTLTを売却して、その資金で安くなった期待の株式銘柄を仕込み、逆に株式暴騰時に株式を利益確定して、安くなった債券ETFを今後の暴落に備えて買っておく、といった戦略です。
2022年は利上げが加速するので、現状株価もTLTも同じように下がっていますが、将来インフレが解消した後には、また利下げをする局面がやってきますのでTLTとしては価格上昇のチャンスになるでしょう。
長期間でみると10年で+4.51%、設定来(約20年)で+6.61%と比較的安定はするのかもしれません。
続いてTLTの分配金ですが、以前は2.5%程度ありましたが2020年、2021年は1.5%前後に低下しています。
分配金を目的とするというよりは、値動きに注目した活用法を考えた方が良さそうです。
ここで、TLTについてまとめておきます。
- 信用リスクが低い
- 金利に敏感で値動きが大きい
- 株式の暴落時のリスクヘッジになるかもしれない
分配金狙いの債券ETF
分配金によるインカムゲインを狙う債権ETFとしてはHYG、JNK、LQDが有名です。
HYGやJNKはハイイールド社債、いわゆるジャンク債と呼ばれ信用力はそれほど高くない社債に投資していますが、その反面分配金が高いのが魅力です。
LQDは信用力の高い投資適格社債を集めたETFで、利回りもそこそこ良く人気のあるETFです。
HYG、JNK、LQDの基本事項
HYG、JNK、LQDの構成銘柄信用格付け比率
HYG、JNK、LQDそれぞれの構成銘柄(債券)の信用格付けの比率を見てみます。
HYGとJNKは信用格付けBBとBを中心に構成されており、どちらかというとJNKの方が信用リスクの高い銘柄の割合が若干多くなっています。
LQDはA、BBBを中心に構成されていて割と安心感があります。
HYG、JNK、LQDのパフォーマンス
HYGとJNKの株価パフォーマンスは似ています。
LQDは2021年6月からの1年でだいぶ価格が低下していますが、安い時に買っておくと利回りは良くなります。
株式(S&P500)やAGGとも比較してみますと、AGGよりは値動きが大きいものの、株式(S&P500)と比べれば安定した値動きと言えます。
【年別の分配金利回り】
過去5年のHYG、JNK、LQDの分配金利回りを見てみます。
基本的に、構成銘柄の信用リスクと分配金の高さは逆相関しています。
つまり、分配金が高いとそれだけリスクも高いということです。
- 高く安定した利回りによるインカムゲインが期待できる
- 株式より安定した値動き
- AGG/BNDよりは値動きが大きい
まとめ
まとめです。
今回は債券ETFがテーマでしたが、債券ETFといっても色々な債券があって盛りだくさんな内容となりました。
ポイントの部分をもう一度おさらいします。
- 満期日と利率が決まっている
- 金利が上がると一般に債券価格は下がる
- 短期債券は値動きが小さい
- 長期債券は値動きが大きい
- 長期リターンは株式に劣る
- 信用リスクが低い
- 株式と比べて値動きが安定している
- 2%〜3%の分配金利回りが期待できる
- インフレに弱い(価格が下がる)
- 信用リスクが低い
- 金利に敏感で値動きが大きい
- 株式の暴落時のリスクヘッジになるかもしれない
- 高く安定した利回りによるインカムゲインが期待できる
- 株式より安定した値動き
- AGG/BNDよりは値動きが大きい
エッセンスは網羅していると思いますので、参考にしていただければ幸いです。
債券についての基本的な勉強は、 大和証券のサイトもわかりやすく参考になると思います。
それでは今回はこの辺りで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!